毎年春になると、あちこちで「イースター特集」という文字が目に飛び込んできます。ショップでは、ウサギや卵などのポップなグッズが並び始めますよね。

今年2022年のイースターは、4月17日の日曜日。キリスト教においては、クリスマスと並ぶ記念日で、イエス・キリストが死から復活したことを思い巡らすときです。

ゴスペル音楽にも、イースターに関連する曲がたくさんあります。今回はその中から、3曲をピックアップしてみました。

1.《Alive》 by Israel Houghton

1曲目に紹介するのは、ゴスペルアーティスト「Israel Houghton(イズラエル・ホートン)」の《Alive》です。イズラエルは、ロックのテイストとブラックミュージックのテイストを混ぜ合わせたような、独特な音楽性を持つことで知られています。それは彼が、黒人のお父さんと白人のお母さんの間に生まれたことに関係するのかもしれません。

この《Alive》という曲は、かっこいいバンドサウンドで、イエスが今も「Alive=生きておられる」ということを宣言しています。特に印象的な言葉がこちら。

He conquered death, so I can live.

[日本語訳]

イエスは死を打ち砕かれた
だから私たちに(死から救われる)いのちがあたえられている

死は終わりではなく、天で過ごす始まりにすぎない。イエスは、私たち全ての人におとずれる死に打ち勝ち、私たちに永遠のいのちを与えてくれるのだと、イズラエルは歌っているのでしょう。

2.《Were You There?》 by Negro Spiritual

2曲目は、ゴスペルのルーツとなる「Negro Spiritual(ニグロ・スピリチュアル)」から《Were You There?》です。ニグロ・スピリチュアルとは、日本語で黒人霊歌と呼ばれ、アメリカの黒人たちが奴隷時代に歌った音楽です。日本語では「あなたもそこにいたのか」と訳され、教会でも親しまれている曲です。

Were you there when they crucified my Lord?
Oh! Sometimes it causes me to tremble, tremble, tremble.

[日本語訳]

あなたはそこにいたのか? 
彼らが私の主(イエス)を十字架にかけたとき
ああ、そのことを思うと 私はふるえるのです

歌詞に出てくるイエスを十字架にかけた「彼ら」とは、聖書に登場する当時の宗教学者たちが中心でした。しかしその中には、イエスを師としてあおいでいた群衆も混ざっていたようです。昨日まではイエスのことを救い主だと言っていた人々も、宗教学者たちを恐れ、イエスを十字架にかけろと罵倒する側にひるがえったのです。

「なんて卑怯な人々でしょう!」と私たちは思います。しかしこの歌詞は、「今のあなたもそこにいたとしたら、同じじゃないですか?」と語りかけています。

神が望むことよりも自分の考えや、自分のしたいことを優先する。神と共に歩もうと決意しても、次の日には人々の流行に流されてしまう。もしイエスの時代にいたとしたら、あなたも十字架にかけろと叫んでいたのではないですかと。

この曲は作者不明で、おそらく1800年以降の古い曲でしょう。しかし、ときを超えて私たちに問いかけてくる深い曲です。

3.《Don’t Cry 》 by Kirk Franklin

3曲目に紹介するのは、カーク・フランクリンの《Don’t Cry》です。直訳すると「泣かないで」という曲です。冒頭には、このようなフレーズが登場します。

Why do you cry?

He has risen.

Why are you weeping?

He’s not dead.

[日本語訳]

なぜ泣いているのですか?

彼(イエス)は、よみがえられたのです

なぜめそめそしているのですか?

彼は死んでなどいないのに

「なぜ泣いているの?」と、とてもシンプルな歌詞です。しかしこの曲は、一体誰が誰に語っているのでしょうか。背景にある聖書の関連箇所を見てみましょう。

彼らはマリアに言った。「女の方、なぜ泣いているのですか。」(ヨハネの福音書20章13節)

彼らというのは、前後の文脈からすると御使い(天使)であることがわかります。御使いはマリアに、「なぜ泣いているのですか。= Why do you cry?」と語りかけました。ここで登場するマリアとは、以前イエスの弟子として歩んでいたマグダラのマリアのことです。

マリアはなぜ泣いているのでしょうか。何か悲しいことがあったのでしょうか。

彼女が泣いている理由、それは十字架にかけられ墓に葬られていたはずのイエスの体が、消えてなくなっていたからです。誰かが大切なイエスの死体を盗んでいったと思い、悲しくなったのです。御使いはそのようなマリアの様子を見て、優しくこう語りかけました。

「なぜ泣いているのですか。イエスは前から言っていた通りによみがえられたのですよ。」

実はイエス・キリストは、十字架にかかる前に、マリアを含む弟子たちに「わたしは殺され、三日後によみがえる」と語っていました。(※ルカの福音書9章22節参照) マリアはその話を忘れていたのでしょうか。またはイエスの語ったことばを信じられなかったのでしょうか。いずれにせよ彼女は、空っぽの墓を見たとき、イエスが約束通りよみがえったのだと思えなかったのです。

この歌詞はまるで、そのようなマリアに「信じない者になるのではなく、信じる者になりなさい」と、語りかけているようです。

いかがでしたか。イースターは、ウキウキした春に訪れる、どこかポップなイメージがあります。その喜びがどこから来るのか、ゴスペル曲を聴きながら深ってみてはいかがでしょうか。

シェアありがとうございます!

Post Author: ARTOS事務局

コメントを残す